SMTでわかること

千田彰先生インタビュー「唾液検査のハードルを一気に下げるSMT」

SMTの開発にあたっては、測定の有用性を検証する段階で、愛知学院大学の千田彰先生に多大なご協力をいただきました。保存修復学の第一人者であり、予防歯科や患者管理型歯科医療の推進にも尽力されている千田先生に、SMTの可能性とこれからの歯科の役割についてお話を伺いました。

なぜ歯科医院は「行きたくない場所」なのか

「歯科医院といえば、削って詰めて被せるところ」
そうしたイメージが社会的な常識となっており、また歯科医療従事者にとっても、それがある意味では当り前となってしまっているのが日本の歯科医療の現状です。修復治療が最優先で、予防は二の次。実は私自身も、かつてはそう考えていました。

しかし、人間が病気になるからには、当然原因があります。歯科でいえば、う蝕の背景にはう蝕原性菌の存在があり、個人ごとのリスクがあり、症状の進行には一定のプロセスがあるわけです。そうした原因を放置したままでは、いつまでも修復治療が続くだけで、物事は一向に解決しません。患者さんから「行きたくない場所」と思われてしまうのも、現状では仕方ないところがあります。

こうした状況を改善するためにも、歯科は一度自らのあり方を見つめ直す必要があるのではないか。自戒も込めて、私はそう考えています。

歯科が果たすべき役割は「予防・修復・管理」

話は少し逸れますが、歯科の歴史を振り返ってみると、例えば義歯は4,000年前のエジプト時代にまで遡ることができます。欠損を補うという意味での歯科は、非常に長い歴史をもっているのです。しかし、歯そのものを治療するという考え方が出てくるのは、今からわずか100年少々前のこと。近代的な歯科学は、実は意外と歴史が浅いのです。

では、「欠損の補完」から「歯そのものの治療」へと転換した決定的な理由は何だったのか。それは「歯を残したい」という想いです。つまり、近代の歯科はその始まりから、予防を第一義とするものだったのです。

100年ほど前の歯学の有名な教科書には、歯科が果たすべき3つの役割が明記されています。まず1つめは「予防」。2つめは、予防しきれなかった場合の「修復」。そして3つめは、一度修復したものを再発させないための「管理」です。

日本の歯科医療は、過去数十年にわたる“ムシ歯の大洪水時代”という極めて特殊な状況を、懸命な「修復」によって乗り切ってきました。しかし代償として、「予防」と「管理」までは手が回らなかった。その結果が、冒頭の「歯科医院といえば・・・」のイメージにつながってしまったのだと私は思います。

簡単・短時間のSMTは唾液検査の導入に最適

歯科医療が「予防」と「管理」の役割を果たすためには、疾患の原因を把握し、その病態と進行状況をしっかりと見極めた上で対応していく必要があります。そこで重要になってくるのが、リスクを予測し、コントロールするためのデータ収集としての検査です。

幸いなことに、歯科にとって非常に身近な存在で、なおかつ検査の指標として有用なものが一つあります。それが唾液です。実際のところ、すでに唾液検査を導入している歯科医院は多くありますし、その実績と成果も数多く聞かれます。

ただ残念なことに、従来のものは簡便性に難がありました。検査に必要な手間と時間と費用が、導入の大きなハードルになっていました。

その点、ライオンが開発したSMTは、簡単な操作で、非常に短時間に、しかも多くの情報が一度に得られるという特徴があります。歯科医院が唾液検査を導入するにあたって、これが大変に好都合であることは疑う余地がありません。

「定期通院」の理由としての唾液検査

患者さんに定期的に来院してもらうためには、「なぜ定期的に通う必要があるのか」という問いに答えられる理由が必要になります。

唾液検査のデータを蓄積していけば、「私の口腔内を継続的に管理してもらっている」という気持ちが必ず患者さんに起こるはずです。同時に、患者さんが日頃行っている口腔ケアの効果を実感でき、そのことが自身の健康管理への動機付けにもつながるのです。

歯科の未来は健康寿命を延ばすことにあり

乱暴な表現かもしれませんが、歯科は人々の命を救うための医療ではありません。では私たちの存在価値がどこにあるかといえば、人々の健康寿命を延ばすことにあるのです。

歯に病気のある人を正常にし、健康な人をより健康にする。ただの90歳ではなく、健康で美味しくモノを食べられる90歳になってもらう。予防型、患者管理型の歯科医療を行うことによって、そのお手伝いをする。そのあり方にこそ、歯科の未来があると私は思います。